13/05/04-06 立山 (2日目/剱岳 大脱走ルンゼ) [山スキー]
大脱走ルンゼは、剱岳山頂直下南側より平蔵谷へと一直線に落ちているルンゼだ、ダイレクトルンゼとも呼ばれている、と言うか大脱走のほうが別名か?
「大脱走」の由来は、頂上直下で滑落したパーティーがそのまま平蔵谷まで落ちてしまったのだが、全員無事だったことからそう呼ばれるらしい。
山頂から平蔵谷まで標高差350m、斜度平均45度、最大50度の手ごわいクラシカルルートだ。
この日の起床は4:00。
本日の計画としては、一旦剱沢を下り、長次郎谷を詰め稜線へ向う、そこでコンディションが良いようであれば剱山頂へ登頂、大脱走ルンゼを狙い、悪ければ長次郎谷を滑る予定だ。
行程的には余裕がある(というかこのための御前小舎泊まり)ので、ゆっくりと準備を済ませ5:10に御前小舎を出発。
ちょうど別山の稜線から朝日が顔を出すところだった。天気予報どおり快晴で気分が良い。天気が持つのは今日一日だ、このチャンスは逃したくない。
剱沢を長次郎谷出会いまで距離3km、標高差700mの朝一番クルージング。ガリガリのバーンを予想していたが、昨日降った雪がうっすらと積もっていて、快調にぶっ飛ばせた。あまりにも快調で危うく長次郎谷出会いを通り過ぎるところだった。
途中、大脱走ルンゼがきれいに見えた、滑降ラインをしっかりと目に焼き付けておく。
写真正面が剱岳、その山頂直下右側のシュート状に見えているのが大脱走ルンゼ。ちょうど平蔵谷に合流する直前ぐらいまでが見えている。
平蔵谷出合い。うまくいけばこの谷を滑ってくることになる。デブリもそれなりに埋まっているようだ。
と、この写真を最後にコンデジ(canon s100)のレンズが引っ込まなくなるトラブルが発生、使用不可となった。2年も使ってないのにもう壊れたかとガックシきたが、帰宅してから調べてみるとリコールが掛かっていた。どうやら高温多湿など環境下の使用でレンズ内の部品が断線するらしい。軽量でそこそこ写るので荷物を軽くしたい時のフィールド用便利カメラとして使っていたが、もう少ししっかりした物を使うべきなのかもしれない。
5:50長次郎谷登高開始、しばらくはシールで登る。長次郎谷は左手に源次郎尾根、右手に八ツ峰にはさまれ両岸岸壁から圧迫感のため息苦しいが少し登ると開放的な谷になる。遠くに先行パーティーが見える。
谷を詰めていくと、昨日の新雪で面ツル状態になり、快適に高度を稼いでいく。
先行のパーティーは、直接長次郎のコルを目指すルートを取っていたが、昨日の降雪を考慮し、念のため右俣側より熊の岩をまいてコルに向うルートとした。
正面左寄りのコルが長次郎のコル、正面のピーク手前の平らなところが熊の岩。
八ツ峰の影が見事にギザギザ。
熊の岩の横より右俣方面、正面コルが池ノ谷乗越。このまま正面のコルまで突き上げて面ツルパウダー頂くのも悪く無さそう。乗越から悪名名高い池ノ谷ガリーを覗いて見たかったが、さすがにそこまでの時間は無いので熊の岩テラスから左俣へと転進。
右手側を見れば、のこぎりのような八ツ峰に取り付いたクライマーのトレースが見える、時折ビレイのコールが聞こえてくる。皆それぞれにこの好天を楽しんでるのだろう。
熊の岩をこえ左俣に入って振り返ると、爺ガ岳や鹿島槍がきれいに見えていた。
コルへの最後100mだけは傾斜がきつかったので、アイゼンに変えた。
ザックを下ろしていると、後続の単独ボーダー氏に追いつかれたので少し話をする。
僕が右俣を詰めていたので、池ノ谷に抜けるかと思ったそうだ、いえいえそんな豪の者では御座いません、そのうちやってみたいですけどね。
ボーダー氏も大脱走狙いとのこと。ラッセルを交代しながら長次郎のコルへ。
8:50 長次郎のコル着
休憩無しで山頂へ向うボーダー氏を見送り、少し休憩しながら山頂へ向って良いか考える。
雪のコンディションは上々。日照はきついが気温は零下を維持、昨晩の雪は今ならまだ腐ってはいない。スラフは間違えなく発生するだろうがはじめから逃げるつもりでコース取りを考えればよいだろう。逃げ場の無いノドの処理を間違えなければリスクは高くないはず。冷静にリスク評価できてる?気持ちが先走ってない?体力はOK?
そんなことを自分の中でまとめ、山頂へ向うこととする。
コルから山頂へ向う壁に取り付くボーダー氏。
壁を越え、後ろ振り返ると八ツ峰から向ってくるパーティーが見えた、池ノ谷側は超険悪。
9:20 剱岳山頂着。出発より約4時間、山頂までは計画通りのペース。
さすがGWの好天日、山頂は大賑わいだ。多分20人近くいたんじゃないだろうか。先ほどのボーダー氏もくつろいでいた。僕もザックを下ろし360度の景観を目に焼き付ける。山頂の社はもちろん雪の中、三角点のある辺りを念入りに踏んでおく。
皆がハーネス装備で固めている中、僕とボーダー氏だけが滑り系で浮いていた。
「え、どこ滑るの?」ってクライマーの人から見ればかなり変な人扱いされたが、この時期にココにいる時点でお互い様ですって。
ボーダー氏と雪の様子を確認したところ、雪はもう緩みかけていて早めに滑った方がよさそうだった、急ぎ用意する。
9:50 山頂より滑降開始
ファーストトラックはボーダー氏。すごく自然な感じでフォールラインを向いて、1ターンで山頂直下のノールの向こうに消えていく。
少し時間を空けてから僕も大脱走ルンゼ目掛けてドロップ、ギャラリーの「気をつけてー」の声が嬉しかった。
出だしのノール部分は最大で50度くらいはありそうだった。この手の急斜面では最初の1ターンを決めるまでガチガチに緊張するものだが不思議なことにあっさりとターンを切れた、幸先が良い。
傾斜がきつく僕の技量ではテレマークターンは出来ないが面ツル、底付き無しでコントローラブルな雪面。自由にルートを組み立ててターンできるので楽だ。
思っていた通り、雪は緩みかけでターンするたびにスラフは発生するが、それは想定済み。自分の発生させるスラフをよけながら高度を落としていく。
ルンゼ途中より山頂を振り返って
核心のノドへ突っ込んでいくボーダー氏。
平蔵谷との出合いの直前にあるノド部が、このルンゼの核心になる。傾斜がきついうえに幅が狭いため上部からのスラフが集まり、逃げ場が無いので要注意だ。 上から見ると自分の落としたスラフで、フォールラインが樋のようにえぐれている。
ノド上部で一旦スラフが落ちきるのを待ってから、一気に落としていく。
平蔵谷に合流するまでの緊張の瞬間、スラフよりも早くノドを滑り抜け、そのまま出合いへと滑り込む。
滑降した大脱走ルンゼのラインはこんな感じ。
出合いで待っていてくれたボーダー氏とハイタッチして緊張がほぐれていく。
目標が一つかなった瞬間、気持ちが良い。
しかしココはまだ安全地帯では無い。休憩無しで平蔵谷を剱沢へ向けて滑る、標高差は500m。途中からストップ雪になりかけていてなかなか難儀した。もう30分早くに滑り始めたほうが良かったかもしれない。
剱沢との出合いにて大休止してシールに履き替える。
10:40 剱沢登高開始
だるいが朝気持ちよく滑った分は登り返さないと帰れない。気温も上がり上下ともインナーだけでちょうど良いくらい。脱水症状にならないよう、ゆっくり休まずイーブンペースで登っていく。
剱沢をひたすら登る、照りつける太陽が熱かった。
12:20 御前小舎帰着
雪の状態が良く、思ったより早く御前小舎まで戻ってこれた。
まずは山岳警備隊の方に帰着と状況の報告を行う。大脱走ルンゼを滑っているとこを、ちょうど双眼鏡で見てたらしい、ヘタレた滑りだったので、ちょっと恥ずかしい。
その後、小屋の横手に並んでいるドラム缶が良い感じに温まっていたのでその上でお昼寝を決め込む、ぽかぽかして気持ちが良かった。
1時間ほど休憩すると体力も回復してきたし、日が暮れるまではまだ時間もあるので、剣御前手前のピークから滑ることにする。ちょうど良い感じに雪が緩んでいてきれいにテレマークを刻めた1本だった。
後は日が沈むまでお散歩をして、活動は終了。
この日は夕日がきれいだった、返す返すもカメラが壊れてしまったのが痛い。
沈む夕日と奥大日岳
小屋で天気予報を確認すると、前日からの予報と変わらず昼過ぎには崩れる予報、風も強そうなので早めに下山すべきだろう。
予定としては、別山→真砂岳→富士ノ折立と歩き、御前谷を経由して黒部平に出るつもりだが天気しだいでは室堂直行かもしれない。
前日に比べてずいぶん宿泊者の減った小屋で、明日に備えて早めに寝た。
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ノートラックじゃない!
そんな所あるんだあ
でも危険な山を滑っちゃいけませんよお(^^)
投稿: Q | 2013年8月16日 (金) 18:30
ほぉーーー
こんなフォトジェニックな景観の中を滑るなんて素晴らしいね。
でも怖そう。。
投稿: えむとら | 2013年8月17日 (土) 11:29
不思議なことに、滑りはあまり怖くなかったんです。
すこし緊張したのは山頂直下の登りの岩雪かな。テレ靴ではアイゼン爪先の力が逃げるような気がします。
ともあれ、危険に対して鈍感になっていないか?その点につねに注意していかないといけないですね、ソロだし。
投稿: malo | 2013年8月25日 (日) 16:33